はじめに
こんにちは。
ピクトリンク開発部でWebアプリケーション開発を担当している西村です🧑💻
今回は、2025年7月3日〜4日にかけて開催された「開発生産性Conference 2025」に参加しましたので、その内容をレポートします。
本記事では、Day1の内容を中心にお届けします。
- はじめに
- 開発生産性Conference 2025の概要
- セッションレポート :開発生産性測定のトレードオフ 「グッドハートの法則」はもっと悲観的に捉えるべきだった
- セッションレポート :大事なことは経営者の意識変革。トヨタグループKINTOテクノロジーズ 代表が語るエンジニアが競争力の源泉である理由
- 開発生産性の3階層について
- 最後に
開発生産性Conference 2025の概要
dev-productivity-con.findy-code.io
テクノロジーで生産性が変わる。
DXで産業が変わる。AIで未来が変わる。
この10年で必ず、世界は歴史的な変化を迎えます。そして、ソフトウェアのつくり方も、数十年に一度の大変革が訪れようとしています。
エンジニアの仕事やエンジニア組織の在り方は、今後どうなっていくのか?
人口減少していく日本社会において競争力をつくっていくためには、何が突破口になるのか?
キーワードは、今大きな注目集めている「開発生産性」です。開発生産性Conferenceは、海外・日本の開発生産性に関する最新の知見を集め、
各企業のベストプラクティスや開発生産性向上への取り組みを通して、
新しい時代の開発のヒントを提供します。
セッションレポート :開発生産性測定のトレードオフ 「グッドハートの法則」はもっと悲観的に捉えるべきだった
登壇者:Kent Beck 氏
グッドハートの法則とは?
「ある指標が目標になると、その時点でそれは“良い指標”ではなくなる」
When a measure becomes a target, it ceases to be a good measure.
この法則は、1975年にイギリスの経済学者チャールズ・グッドハート氏が発表したもので、目標設定と測定における根本的な問題を指摘しています。
Kent Beck氏は、マッキンゼーが2023年に公開した
「Yes, you can measure software developer productivity」
という記事を取り上げ、指標による開発生産性の測定に対して警鐘を鳴らしました。
指標によって引き起こされる弊害
Kent Beck氏は以下3つを例に挙げました。
- タイピング速度を指標とした場合 
 → 速さばかりに意識が向き、本来の価値創出に繋がらない。むしろ品質が低下する恐れがある。
- PR数の多さを重視した場合 
 → 優秀なエンジニアはPRを小さく分ける傾向にあるが、数を追わせると無理な分割や作業の形骸化が発生する。
- 「障害ゼロ」を目標とした場合 
 → 問題が隠蔽され、再発防止や改善の機会が失われる。
📌 指標を追うことが目的化すると、開発プロセス全体が歪む。
測定の目的を見失わない
マッキンゼーは、ソフトウェアの開発活動を「Effort → Output → Outcome → Impact」の4段階で構造化しています。
Kent Beck氏はこの流れに着目し、以下のように述べました。

- Effort(努力)に近い指標ばかりを追うと、本質的な価値から遠ざかる。
- 最も重視すべきは、「お客様がどう変わったか(Outcome / Impact)」である。
指標の扱い方で意識したいこと
- 測定はあくまで手段であり、目的ではない。
- プレッシャーではなく、気づきを促すために使うべき。
- 指標を押しつけるのではなく、共感と納得を得ることが持続的な変化を生む。
- 行動を強制する「Push型」ではなく、主体性を引き出す「Pull型」の運用が望ましい。
今回のセッションで得た気づき
- 4keysの指標との向き合い方を見直したい 
 私のチームでは「リリース頻度」や「変更のリードタイム」などをKPIとして扱っていますが、 今後は数値の改善そのものを目標にするのではなく、行動変容のきっかけとして活用していきたいと感じました。
- Outcomeにもっと目を向けたい 
 Output(施策の数・リリース量)に注力してきましたが、 本当に重要なのは「その結果、ユーザーの体験や行動がどう変化したのか」というOutcomeであると再認識しました。
補足メモ(印象に残ったキーワード)
- AIの登場により「良かれと思ってやったことが悪影響を生む」例が増えている
- AI活用は単なるアウトプットよりも「学習と成長」への応用が重要
- 生産性を上げても、終わりなき要求が続く現実
- 指標の導入が、かえって悪影響を与えるケースがある(マッキンゼーの例)
セッションレポート :大事なことは経営者の意識変革。トヨタグループKINTOテクノロジーズ 代表が語るエンジニアが競争力の源泉である理由
登壇者:小寺 信也 氏(KINTO / KINTOテクノロジーズ代表取締役)
経営と現場のコミュニケーションの断絶
- 経営層とエンジニアとの間に、十分なコミュニケーションが存在していないことが、現場理解の欠如に繋がっている。
- その結果として、事業側は上から目線、開発側は下から目線という不健全な構図が生まれている。
より良い関係性に向けて
- 要件定義の段階から対等に議論することが重要
- エンジニアからの事業提案は非常に価値がある
 → 「こういうことやりませんか?」という提案を歓迎する文化を育てる
 → 荒削りな案でも、企画者を開発現場に巻き込んで磨き上げていくというアプローチも効果的
エンジニアの自己認識と活かし方
- エンジニアはもっと自分のスキルや可能性を信じていい
- 実力があるのに、その価値が認識されていない or 興味を持たれていない
- 自分の価値を伝える努力、そして閉じた世界にとどまらず、事業と連携する姿勢が求められる
開発生産性の3階層について
広木大地氏が提唱する「開発生産性の3階層」についての言及が多くありました。

レベル1の「仕事量の生産性」では、「Effort」や「Output」が該当すると考えられます。
しかし、これらに過度に執着すると、機能の開発やリリースに注力しすぎてしまい、
顧客の本質的な課題やプロダクト本来の価値が置き去りになる、いわゆる「ビルドトラップ」の状態を招いてしまいます。
顧客の価値に直結しない機能の乱立を防ぐためにも、レベル3の「実現付加価値の生産性」にフォーカスすることが重要です。
生成AIの登場により、この視点はこれまで以上に重視されるようになっています。
また、システム開発においてはスピードが求められる一方で、従来通りの品質を維持することも求められており、
品質確保に関する生産性の向上も重要なテーマとなっています。
最後に
開発生産性Conference 2025 Day1の内容を中心にご紹介しました。
Day2についても、後日別記事にてレポートを公開予定です。
引き続きご覧いただけると嬉しいです!